家庭教師をしていた頃の話(実践編)


導入編では愚痴っぽいお話になってしまいましたが、今回は私が家庭教師先(ご家庭)での経験を実践編として綴ります。


私はご家庭への初日は自己紹介も兼ねて、親(とりわけお母様)が家庭教師(私)に期待することを必ず聞くようにしていました。
まぁ受験生の場合は当然「受験合格」ですが、それでも最初は必ず聞きました。※お子さんも同席させます。


私が少し驚いたのは受験生ではない子の親の回答です。
既に教材を購入しているご家庭なので、私は当然のように「家庭教師には当然教材を進めてほしい」「勉強を教えてほしい」「成績を伸ばしてほしい」と言うものと思っていたのですが、
「学校では内気で発言ができないので、自信をもって発言ができるようにしてほしい」「とにかく部屋に閉じこもってゲームばかりしているので、どうにかしてほしい」
という考えもしなかった回答ばかりだったのです。


そのため、私はそれぞれのお子様に合わせて何ができるかを考えたものです。
学校の話を聞いたり、世の中で起きていることを説明したり、一昔前のおもちゃを作ったり、それで遊んだり、勉強も少ししましたが大半はそんなことばかりしてました。


そんな中、先に書いた「学校から帰ってくるなりすぐに部屋に閉じこもってゲームばかりしている中学2年生の子」については特に力を入れました。
そもそも勉強が大嫌いなようで、学年でもビリから2番目。勉強を目の前で教えていても居眠りする。
かと言って、活発な子かというとそうではなく、非常に暗く、滅多にしゃべらない非常に温厚な子でした。


今度居眠りしたら外を走りに行こうと言ったそばから、寝てしまったため親に外出許可を取って冬の暗く寒い中を一緒に走ったこともあります。
いろんな世間話をしたり、勉強の楽しさを知ってもらおうともしました。
毎週のように、対策を練ってからその子の家にお邪魔するという日が続きましたが、どれも期待するほどの効果はありませんでした。


そんなある日、こちらの思いばかりを伝えようとしてもダメだと気づき、その子がしたいことを聞いてみようと思い、将来何になりたいのかを根気強く聞いてみました。
すると、ようやく「ミュージシャンになりたい」という回答がありました。


これはキタ!と思いました。将来やりたいこともない、何も考えていないような子だと苦しんだとおもいますが、少なくともこの子は将来やりたいことがあると思ったときは、ほっとしたものです。
ただここからが少し難関でした。色々話を聞いてみると


学校の音楽(合唱や合奏)に興味がない。
カラオケにも行ったことがない。


「どうしてなりたいの?」って聞いてみると、当時全盛期だったモーニング娘。加護ちゃんが好きだからという理由でした。
「どうやったらミュージシャンになれるか知ってる?」って聞いたら、「知らない」と帰ってきました。


でも否定する訳にもいきません。折角の夢ですから、本当にミュージシャンになるなら、歌を歌う練習をしなければならないこと
ボイストレーニングしたり、さらには事務所に所属するためにはオーディションに参加したり、路上ライブなどもといったこと
を一般常識レベルで説明してあげました。
さらに、今の状態からミュージシャンになるには、相当の努力が必要だということ。勉強しなくたって有名なミュージシャンになれること
その子の場合は、勉強している場合ではないかもしれないことも話ました。


その説明の後でもまだミュージシャンになりたいと言うのですから、たいしたものです。
なので、親の前で自分の夢を説明できるか、ミュージシャンになるために勉強は捨てて歌の練習などに時間を割くことをお願いできるかと聞きました。


当然です。自分の夢が嘘でなければ、その説明やお願いを親にできるはずだからです。
むしろ、できなければそれは適えようとする夢ではなく、ただの憧れにすぎません。


そして、お母さんを呼び、彼はお母さんの前で、30分ほど沈黙の後にようやく自分の夢を泣きながら伝えたのです。もちろん夢だけではなく、夢を実現するために、ミュージシャンの勉強をさせてほしいことも彼自身の口から語りました。


よくやったと思いました。その後は、私からもお母さんに説明をしました。
お母さんは彼の夢など聞いたこともなかったようでした。
そして「話はわかったが、ミュージシャンになれなかった場合のリスクがある」という話を彼にしました。
私もそれを望んでいました。なので、今度は私から彼に勉強することが後々の可能性を広げることになるという話をしました。


そんなこんながあり、前置きが長くなりましたが、結果をお話すると
毎週土日になると、お父さんが彼の勉強を一緒になって見てくれるようになり、彼の家は家族間で話合う時間が増えたのでした。


私はもう要なしです。そのご家族の家庭教師を辞めることにしました。
でもきっと、その後もうまくいってくれたと思います。


失敗談もあります。
親が一風変わったお勉強熱心なご家庭もありましたが、非常に勉強ができる子(えーと正確に言うとテストが良くできるメガネをかけたガリ勉タイプの小学生)だったのですが、何も教える必要がなく、私としてはもっと外で遊ぶことを覚えた方がいいと思って、親に話をしましたがものすごくプライドが高く、勉強だけしていればいいの!みたいなことだったので「今家庭教師をつけても何も変わりません」と言って辞退させていただいたことがあります。
あの子には、本当に外で遊ぶ楽しさを教えてあげたかったなぁ


話を元に戻しましょう。
私は教育学部の出身でもありませんし、教職免許も取っていません。
ただ人に教えることは好きで、今でも教えることをお仕事でさせてもらっています。
今後、弊社ではIT業界の方への教育(パソコンの基礎からプログラム、セキュリティ、プロマネ、ヒューマン)を拡充していく予定なのですが
通り一遍のつまらない教育ではなく、受講者のためになる面白い教育を考え、実践できる方と一緒に講師をしていけたらと思います。